プロジェクト紹介
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実際に見にいってきました!クラフトビール醸造所視察 RISE×WIN BREWING(徳島県・上勝町)
今年、ホップでつながる仲間たちと「ホップツーリズム」と題して、京都北部、長野、もう1か所、合計3か所程度視察の旅を計画していました。
2月末あたりから今年春、世間ではコロナ禍で色々なものがストップしました。
私たちも同じく、止めざるを得ないもの、止められないものの選択に迫られることが多くありました。
そんな状況下で、先の活動に対して不安を感じることは全くなかったとは言えませんが、逆に考えれば走りぬけてきたスピードを緩め、今までの振り返りと、どんな状況にも対応できる次のアクションを考える期間が持てたということかも知れません。
そんな貴重な時間の中で、ビールに対するイメージについても考えてみました。
今までのビールのイメージは、華やかなパーティー、大勢を集めてのイベント、飲む食べる話すなど賑やかな空間、「乾杯」文化の他、あまりよくないイメージでは一気飲みで乱暴に扱われるアルコールとして、大量消費・大量生産の飲み物というイメージもありました。
一方、クラフトビールは今までのビールとは全く別のカルチャーを感じていました。
小規模生産、造り手の顔が見える、割高だが高品質、味に個性があり、知れば知るほどミステリアス、アドベンチャー。そんな、常に変化をしながら進化するクラフトビールに魅了されました。
そして、2017年にホップ栽培を始め、クラフトビールをほぼ毎日欠かさず飲むようになり、今年で4年目を迎えた時、今まで特別な存在だったクラフトビールにある疑問を持ち始めていました。
『味覚は人それぞれに好みがある。おいしいクラフトビールが飲めるお店はどんどん増えてきている。これから先、行ってみたいお店や商品を選ぶ時に自分は何を基準にしていくのだろう?そして、知人や友人に情報共有したい価値とは何だろう?』
そんなことを考えていた矢先、一目見るだけで惹きつけられるWEBページがありました。
それが今回訪れた先の「RISE×WIN BREWING」
WEBページが素敵なこともですが、この醸造所の取り組みも、上勝町全体の取り組みにも共感しました。
全体像を見るためには、やはり行くしかない!
ということで実際に見に行ってきました。
上勝町は、徳島ICから約60分。
無数の木に守られた山とエメラルドグリーン色の川を眺めながら進むと、よくみる日本の地方の風景から一転して、かっこいい建物が出てきました。
まずはクラフトビールの店「RISE×WIN BREWING」
前の道を奥に進むとゴミステーション併設の上勝町ゼロ・ウェイストセンター「WHY」
この施設は、今年5月20日にオープン。
コロナ禍の中で、ゴミの日に合わせてグランドオープンを迎えていました。
店内の様子。こちらでは、町民が不要となったものが整然と展示されていて、持ち帰りは町民以外の方でもできるというSHOP。自分にとってはゴミ(いらないもの)でも人にとっては必要なものかも知れないというコンセプトで、すべて無料で持ち帰りができます。
SHOPに入ると最初のお出迎えは空き瓶でできたシャンデリア
施設の設計は次世代の建築スタイルを持つ日本の建築家によるものだそう。
地域で伐採された杉材や不要になった建具や家具などを活用して設計されていて、細部にもこだわりがあり、見ごたえがありました。
現地の方とお話させていただき、これまでの経緯をお聞きしました。
「自然が残る場所なんて世界にはどこでもある。ここにしかない価値をつくろう!
そう思い立ったオーナーの目に入ったのが、上勝町が誇る”ゴミステーション”だった」
現在のゴミステーション。町内にはレッカー車はなく、町民が自らゴミをもって来るシステム。
ゴミは45種類に分別されるそうです。
上勝町ゼロ・ウェイストセンター「WHY」のWEBページに記載されている言葉が印象的でした。
WHY do you buy it?
WHY do you throw it away?
なぜそれを買うのか?
なぜそれを捨てるのか?
私たち消費者は問いかけられます
WHY do you produce it?
WHY do you sell it?
なぜそれを作るのか ?
なぜそれを売るのか?
私たち生産者は問いかけられます
今回の視察でも美味しいビールに出会えました。
この日つながっていたビールはオーストラリア森林火災へのチャリティービール、上勝特産の柚香(ゆこう)の皮を使用したものや果汁をつかったものまで、副材料も捨てるところなく使っておられます。
この町で醸造されるクラフトビールの特徴は、文化・芸術と企業や行政や市民を結び、消費者と生産者をつなぐ役割を果たしているのだと思いました。
ここのオーナーさんは、上勝町に関わりだして10年。本業とは別に、リサイクルショップをしたりしていたけれど、5年前にクラフトビール醸造に行き着いたといいます。そのきっかけは、クラフト文化で有名なアメリカオレゴン州ポートランドでの光景だったそうです。
今回の訪問先で、ビールに対する新しいカルチャーが一つみえたように思います。
確かに、美味しいビールが飲める場所はどこにでもあるかもしれない。
けれど、この土地にしかない地域の資源と文化とアートが重なりあった時。
新しい価値が生まれる。
来訪した人が、何を感じ、何をきっかけに自分事にして捉えてもって帰るのか。
その答えは一つではないのもまた良い。
RISE×WIN BREWING の店内。使われていた建具がパズルのように並べられ、アート作品のような建物の中でビールをいただけます。
第2醸造所の外観と内観
第2醸造所に併設されているテイスティングルーム。
1度塗り、2度塗り、3度塗りと藍染めされた木材をつかっているので、濃淡があり魅力的な色合いとなっています。
店員さんはとてもフレンドリーでいろいろ教えてくださいました。醸造所も丁寧にご案内いただきました。
そんな場所やそんな人からつくられるビールは、どこでもある美味しいビールとはひと味違うことは言うまでもなく、決して今までのビール文化のような賑やかで華やかでもないし、大量生産で安価にはならないけれど、そこには味わい深いビールとして飲む文化があります。そしてまちや空間は、ビールの味わいにプラスするかのように、今までの価値以上のものに気付きを与えてくれる存在としてありました。
なぜここの場所に行きたいのか?
なぜこの商品でないといけないのか?
みなさんの中でも今一度考えてみる機会をもってみませんか?
私にとってのクラフトビールは、味がおいしいのは前提ですが、ビールがつくられたまちの魅力やそこに住む人と出会い、多様な価値観や暮らしを知るきっかけをくれる存在となっています。これからもクラフトビールの奥にある、たくさんのストーリーと出会い、みなさんと共有していきたいと思います。
それが、私がクラフトビールに感じる価値であり、共有したい財産です。
文:山田摩利子
「RISE×WIN BREWING」https://www.kamikatz.jp/
上勝町ゼロ・ウェイストセンター「WHY」https://why-kamikatsu.jp/