プロジェクト紹介
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ツーリzoom NO.4 べっぴんやさい×島根県邑南町の旅
第4回目は、ホップでつながるコミュニティ「THANKS HOP」の中津での活動に参加いただいている坂本秀和さん(中津リバリュープロジェクト)のご紹介で、島根県邑南町在住の戸津川 良さんが旅先案内人です。
「べっぴんやさい」と「島根県邑南町エリア」へ、ツーリzoom!
島根県邑南町はどんなところ?
日本の中国地方にある島根県の真ん中あたりにある町です。位置的に中国地方のおへそと呼ばれてます。
(戸津川さん)
もともと父が隣町でスーパーを経営していて、僕はそこで野菜のバイヤーをしていました。当時、大阪の中央卸売市場本場、東京の築地卸売市場太田、広島の卸売市場などと取引していました。
市場では、野菜の味はもちろんですが、見た目での取引されることが多いけれど、僕がバイヤーだった時代のこだわりは見た目ではなく、その野菜の後ろ側を大切にしていました。
どんなところで作られ、どんな人がつくっているのか。
生産者と消費者の『架け橋』になりたい、そう思って仕事していましたね。
(ナビゲーター、藤原さん)
わかります!このツーリzoomをやり始めたきっかけも、私たちが食べているものすべての後ろには命があり、それをいただいているという考えを広めたいと思ったからです。
スーパーに行くと、生産者の顔写真が野菜の横に並べられているのもありますが、やはりそれだけでは(生産者の想いは)伝わりにくい。どういう気持ちで、どういう場所で作られているのかのストーリーをみなさんに知って欲しい。
そして普段、当たり前って思っていることでも本当は当たり前じゃないことに気付いてほしい。
べっぴんやさいとは、「小さなアクションを積み重ねる野菜たち」
私たちがつくる野菜は、ここにおられる坂本さんの奥さんが活動されている「わたしもあなたもべっぴんさん」の活動に共感して、その活動を少しでも日本にも世界にも広げていきたいよね?と思って僕たちは『野菜』でサポートしていきたいと思ったからです。
それで、自分たちがつくるお野菜に「べっぴんやさい」とネーミングをつけました。
僕たちと同じような考えをもつ農家さんがこれからももっと増えてくれたらうれしいと思っています。
べっぴんやさいとは、「唯一無二」「自分たちのこどものような」「個性があふれる」を意味します。
僕たちの子どものように育てた野菜は、見た目では判断されない、やさい一つ一つの個性を大事にしたいという想いからつけました。そして、個性のある子らの行き場はまだまだ作れると思っています。
※現在、にんにくと玉ねぎを収穫中
今年は年間100種類の野菜を育てています。カテゴリーにしたら30種類くらいかな。
そりゃ、トマト農家、きゅうり農家と品種を決めたほうが生計的には楽になることはわかっています。けれど僕らは、農業を教えてくれたお師匠さんの考えで「自分で食うものは自分でつくる」ってことをまずは念頭において、『自分たちが食べたいものをつくりたい』⇒『その幸せを分かち合いたいからお客様に買ってもらいたい』 ⇒『それが一番説得力あるのではないか』と考えています。
だって、自分たちが食べないものをつくってたらビジネスに傾いてしまって、結局そこは自然ではなくなるから。
一方で、僕は化学肥料をつかったり、ビジネスで農業されている方を悪いとは思っていません。
なぜなら見た目がきれいで、常に欲しいものを欲しい量だけ欲しい時に手に入れたいという買う消費者の声もあるからであって、生産者の大半は誰もがいいものをつくりたいと思っていますよ。
けれど、市場の評価や選ぶ人がいて、それが生活に直結することになれば致し方なくお客様の要望に応えるという生産者の気持ちも買う消費者の方にはわかってほしいと思います。
夢は、単にフードロスだけではなくカルチャーロスの削減
今回のコロナ禍で、エンドユーザー(消費者)が生産者と直接つながり、いままでのようにどこから調達するではなく、生産者から直に手にいれたほうがいいという自分たちが口にするものの「調達する場所」「調達方法」の見直しに気付いた人が増えたように思います。特に、都市部の人にその傾向があると感じています。
今までにように、欲しいものが欲しい量だけ欲しい時に手に入るということが自然でないとわかったら、不安定も受け入れる文化も必要であると気づくでしょう。これは農業だけでなく漁業も林業など、自然と共に暮らしている人たちはみなそうです。漁師さんだって、どれだけ魚が獲れるなんてのもわからないですから。
昔のように季節を感じる素材、風土(環境)での食文化を、今の時代に合う伝え方でしていけたらいいなと思っています。季節がずれても発酵や保存方法などで長期間食べられる方法があることも次世代に伝えて残していきたいと思っています。
特に今、農家がつくるお野菜が食べやすい野菜に偏りが出てきていることに懸念してます。例えば、ごぼう、さといも、かぼちゃ離れをしている日本人が多く、その理由は調理が面倒、子どもが食べにくいなど。その影響で、作り手も減少してきています。
僕は、単純に野菜を捨てる捨てないのフードロスだけでなく、フードカルチャーロスの削減にも取り組みたいと思っています。野菜はそのままだと日持ちしなくても、カタチ変わって賞味期限も伸び、命あるものを捨てなくてもいいのなら、どんな方法でも模索していきたいと思っています。
決して儲かるとか生活が豊かになるではなく、情緒的なところでの幸せ感を達成させていきたいという気持ちを大切にした農業をしていきたいと思います。
島根県邑南町のこれから
邑南町は、A級グルメの街と言われていますが、あれはB級に合わせてA級と名付けただけで、本来は、A⇒永遠の「永」で、永級グルメという意味があるんです。
地元に根付く食文化を大切にしたグルメがあるという意味なんですけれど、今、ちょっとそれが違う方向に行こうとしているので、地元民もちょっと困惑しています。本来の意味合いに戻していきたいですね。
僕たちは、先代から引き継ぐ食、味噌汁、漬物、発酵食品、先代の知恵を活かした食文化や風土は、その土地に行かないと実際は食べられないということを伝えたい。
参加者からの声
- 私たちの住むまちでは、”いいものと思っていたけれど実は値段が高いだけだった”というのもある。
- 料理教室などをしているので、食材選びにあまり気にされていない方にも本当によいものをシェアしていきたい。
- 都市と地方がつながり、一緒にフード(カルチャー)ロス問題に取り組みたい。
- 価値を保存する方法は、生産者では思いつかなくても飲食店の人とつながるといろんな加工方法があることを知れる(もっとつながるといいと思う。)
- 生産者を応援しながら自分たちも楽しむことをやっていきたい。
- 今回のコロナ禍の状況で免疫力アップをするには、旬のものをいただくなど、普段の食生活の大切さがで再確認している。
- 日本人の古来の人が一番大切にしたものを都会の人が受け入れ、自然のままを受け入れる。来たものを拒まず、それを流すことは難しく考えなければできそう。
- アーティストの世界でも、チラシ、宣伝、コンサートなど、随分前から、観客層を自分たちでつくることを言われていた。求めている人にダイレクトにつなぐことがこれからの時代は必要。
- ニーズにあったもの、ありのままのものを様々なネットワークで培って、発想する力が必要で、その新しい発想は、ジャンルを超えてつながり合うことでできると思う。
- せっかく出会えた関係なので、お互い協力し合えることをさぐっていきたい。
今回の旅、みなさんはどのように感じましたか?
邑南町という一つのまちから、野菜を通してなげかけている小さなアクションを積み重ねる挑戦をしている「べっぴんやさい」。野菜のバイヤー職を経験し、いろんな野菜の取引の現場を見てきた戸津川さんだからできる生産者さんのお考えをお聞きできたように思います。
戸津川さんからよく出た言葉は「文化」でした。
そして、情緒的な感覚を持ちと表現されていたことが印象的でした。微妙な感情、ニュアンス、いい塩梅・・・そんな情緒的な感覚が価値になる「情緒的価値」がこれからの時代には必要ではないかと感じました。
藤原さんからは、気付いた人たちから当たり前を「感謝」に変えていく活動をTHANKS HOPと一緒にやっていきたいと思ったのでツーリzoomをすることになったんです。という言葉があったことも印象的でした。
藤原さんの言葉は、戸津川さんが表現されたことと一緒で、感謝のカタチって唯一無二。生産者と消費者が直接売り買いする場は減っているので、感謝を口にすることが少なくなってきているけれど、気づいた人から意識して変えていけば、それこそ小さなアクションで世界を変えていくことができるのかも知れません。
【アーカイブ用Youtube動画はこちら】※本編13:30から始まります。
文、山田摩利子